大判例

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名古屋高等裁判所 昭和46年(う)13号 判決

本籍並びに住居

名古屋市中川区八幡町六丁目七五番地

パチンコ遊技場経営

山口代造

明治四五年一月一五日生

本籍

名古屋市中川区尾頭橋通二丁目二七番地

住居

同市昭和区下構町一丁目四番地

パチンコ遊技場経営

伊藤秋雄

明治四五年二月一日生

本籍

名古屋市熱田区金山町一丁目五番地

住居

同市瑞穂区初日町一丁目三〇番地

パチンコ遊技場経営

小野金夫

昭和一〇年一月一日生

右三名に対する各所得税法違反被告事件について、昭和四五年一二月八日名古屋地方裁判所が言い渡した有罪判決に対し、被告人らからそれぞれ商法な控訴の申立があつたので、当裁判所は、検察官栗田昭雄出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人石原金三名義の控訴趣意書(補充書を含む。)に、これに対する答弁は、名古屋高等検察官検事栗田昭雄名義の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであるから、ここに、これらを引用する。

控訴趣意第一点(事実誤認)について。

所論の要旨は、原判決は、一、昭和三六年分売掛金勘定四、同年分貯蔵品勘定三、昭和三六、三七年分建物勘定四、昭和三七年分出資金勘定五、昭和三六、三七年分減価償却引当金勘定六、同年分違約損失金勘定の各項目について、事実を誤認したものであり、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。

所論にかんがみ、本件記録を調査のうえ、所論の順序に従い、各勘定科目別に検討することとする。

一、 昭和三六年分売掛金勘定について。

所論は、要するに、原判決が昭和三六年分売掛金勘定において、松村四郎に対する三七二、八〇〇円及び柏原芳春に対する一〇〇万円の各売掛金の存在を否定したのは、事実を誤認したものである、というのである。

(一)  松村四郎に対する売掛金債権の存否

昭和三八年八月二八日付松村四郎作成の名古屋国税局収税官吏大蔵事務官加藤孝之宛回答書(記録四、〇八四丁)に、原審第一二回公判調書中証人石川新三郎(本件の調査を担当した名古屋国税局の査察官)の供述部分を併せて考えると、松村四郎は、昭和三五年六月二五日被告人らからパチンコ器、還元機等を代金合計七七二、八〇〇円で仕入れたが、右代金は、そのころ現金で全部決済されており、その後においては、被告人らとの間に取引はなく、従つて、昭和三六年度期首には、被告人らに対する買掛残高は皆無であつたことを認めることができる。もつとも、原審証人松村四郎に対する尋問調書、被告人伊藤秋雄の大蔵事務官に対する昭和三九年四月二〇日付質問てん末書中には、昭和三五年一二月末現在、被告人らが右松村に対し、売掛残債権三七二、八〇〇円を有していた旨、所論にそい、叙上の認定に反する各供述記載部分が存在するけれども、これらの各供述記載部分は、前掲松村四郎作成の回答書及び前掲公判調書中証人石川新三郎の供述部分と対比してにわかに措信しがたく、他に叙上の認定を覆えし、売掛金債権の存在を肯認するに足りる証拠は見当たらない。従つて、昭和三六年度期首に松村四郎に対する売掛金三七二、八〇〇円は存在しなかつたものと認めた原判決の判決の判断は相当であつて、原判決に所論のごとき事実誤認のかどは存しない。論旨は理由がない。

(二)  柏原芳春に対する売掛金債権の存否

原審証人柏原芳春に対する尋問調書及び被告人伊藤秋雄の大蔵事務官に対する前出質問てん末書によると、被告人らと柏原芳春との間に昭和三五年五、六月ごろから約一年間にわたり、パチンコ機械の売買取引が行なわれていたことは認められるが、同人らは、いずれも、取引の日時、数量、金額、代金の支払状況等については、きわめてあいまいな供述をしたうえ、昭和三五年の年末には一〇〇万円位の買掛残(あるいは売掛残)があつたと思う旨の概括的、推測的供述をしているに止まるのであつて、その取引の内容が甚だしく具体性を欠くものである以上、右柏原及び被告人伊藤の供述によつては、売掛金の存在を推認し得ないものというほかはなく、他に柏原に対し、被告人らが所論のごとく昭和三六年度期首に一〇〇万円の売掛金債権を有していたことを認めるに足りる資料は存しない。従つて、原判決が右債権の存在を否定したのは相当であつて、事実を誤認したものということはできない。論旨は理由がない。

二、 昭和三六年分貯蔵品勘定について。

所論は、要するに、原判決が昭和三六年分貯蔵品勘定として、八一六、三九二円を認定したのは、事実誤認である、すなわち、これは、天吊型クーラー一四台の貯蔵品としての価額に関するものであるところ、被告人らは、昭和三六年一〇月、それまで設置使用していた右クーラーが役に立たなくなつたので、これを新品に取替えるため除却し、工事施行をした伊藤冷機工業所に重量の目測で七、〇〇〇円ぐらいに見積もり、新品の下取りに出し、その後同工業所は、これをスクラツプとして、五、〇〇〇円で屑屋に売却処分した、従つて、本件クーラーの貯蔵品の価額として原判決の認定した八一六、三九二円よりより七、〇〇〇円を控除八〇九、三九二円は、除却損として認めるべきであり、仮に除却損が認められないとすれば、貯蔵品としての価額を五、〇〇〇円、もしくは七、〇〇〇円と認定すぺきものである、というのである。

よつて按ずるに、原審第一七回公判調書中証人伊藤正直の供述部分(但し後記措信しない部分を除く)及び同第一三回公判調書中証人石川新三郎の供述部分を総合考察すると、被告人らは、伊藤冷機工業所こと伊藤正直(冷凍機販売取付修理業)から、昭和三一年四月ごろ、天吊型クーラー九台を代金合計八五五、〇〇〇円で、昭和三二年四月ごろ、天吊型クーラー三台、角型クーラー二台を代金合計三四九、〇〇〇円でそれぞれ購入し、被告人らの共同経営にかかるパチンコ店桜花園にこれらのクームー一四台を設置使用していたが、昭和三六年一〇月ごろ、右伊藤から新品のクーラーを購入する際、右一四台のクーラー全部を取りはずしたうえ、同人に対し、他に売れたら売つてくれということでその保管を依頼し、右伊藤は、これを承諾のうえ、その後数年間にわたつて、これらクーラーをきちんと包んで保管を続けていたことを認定することができる。もつとも、前記伊藤証人の供述中には、右クーラー一四台は、新品納入の際その下取りとして、重量の目測で六、〇〇〇円か七、〇〇〇円で引き取つたものである旨所論にそうかのごとき部分が存在するけれども、右供述部分は、前記のように、伊藤が右クーラーを数年間にわたつてきちんと包んで保管を続けていた事実や、昭和三八年に行なわれた国税局査察官による調査当時、伊藤が同査察官に対し、右のクーラーは売却希望で預かつているものである旨述べている事実(右の事実は、前記石川証人の供述により明らかである)などに照らし、措信し得ないことが明白であり、他に前示認定を左右するに足りる証拠は見当たらない。そして、右認定の事実関係に徹すると、伊藤が昭和三六年一〇月ごろ本件クーラーを同人方に引き取つたのは、当時右クーラーに商品価値があり、適当なところに売れたら売つて貰いたい旨の依頼を受け、被告人らのためにこれを預かり保管していたものであることは疑いを容れないところというべきであるから、原判決が右クーラー一四台の取得価額合計一、二〇四、〇〇〇円より償却の累積額(この計算関係については原審第一七回公判調書中証人平谷登の供述部分参照)三八七、六〇八円を控除した未償却残高八一六、三九二円を昭和三六年分貯蔵品勘定に認定計上したのは相当であつて、所論のごとく事実を誤認したものということはできない。所論は、要するに、本件クーラーがその取りはずし当時、スクラツプとしての価値しかなかつたものであること及び伊藤がこれを新品クーラーの下取りとして引き取つたものであるとの誤つた前提のもとに、原判決が適正になした事実認定の措置をいたずらに非難攻撃するに帰し、到底採用することができない。論旨は理由がない。

三、 昭和三六、三七年分建物勘定について。

所論は、要するに、原判決が昭和二九年五月改築の第一京楽遊技場の建築工事代金額を四〇〇、九〇〇円と認定したのは事実誤認である。右金額は、建築工事のうち大工工事のみを請負つた古橋工務店に支払つた代金額に過ぎず、同工務店以外のものが請負つた屋根、電気、給排水の各工事、建具その他全工事費を右大工工事費と合算すると、総建築工事代金は二〇〇万円ぐらい要したものであり、仮に右金額が認められないとしても、大工工事費は、総工事費の約三分の一であつたから、少なくとも一、二〇二、七〇〇円は建築工事代金として認定されるべきである、というのである。

しかしながら、古橋弘康作成の昭和三八年八月一日付上申書(但し記録二、九二〇丁以下に編綴のもの)によれば、本件の工事は、同上申書添付の一覧表中、工事番号29の19、中川区尾頭橋通二山口屋(後に第一京楽遊技場と改称)の店舗増改築工事に該当するものであるところ、既設建物の一部増築を内容としており、昭和二九年四月七日差工、同年五月三一日完成し、これが総工事費は、四〇〇、九〇〇円であつたことを認定することができる。もつとも、右古橋弘康は、原審証人として、右四〇〇、九〇〇円は、大工工事費のみであり、総工事費は二〇〇万円位かかつたのではないかと思う旨及び大工工事費は、全体の三〇パーセント位と思う旨、おおむね所論にそうかのごとき供述をしているが(原審第二〇回公判調書中同証人の供述部分)、右供述は、これを裏付ける資料を欠き、前掲上申書の記載と対比考察すると、にわかに措信しがたく、他に前記認定を動かすに足りる的確な証拠は見当たらない。従つて、原判決が右工事費を四〇〇、九〇〇円と認定したのは相当というべきであつて、原判決には所論のごとき事実誤認のかどは存しない。論旨は理由がない。

四、 昭和三七年分出資金勘定について。

所論は、要するに、原判決が国府温泉開発株式会社に対する前田勝吉名義の出資金六〇万円を被告人らに帰属すると認めたのは事実誤認であり、これは、いわゆる名義借りではなく、右前田が実際に出資したものであるから、被告人らの出資金から除外すべきである、というのである。

しかしながら、被告人三名共同作成の昭和三九年七月一三日付上申書(記録三六六八丁)、被告人小野金夫の検察官に対する昭和四〇年二月四日付供述調書及び原審第一三回公判調書中証人石川新三郎の供述部分によると、所論の前田勝吉名義の出資金六〇万円は、実際には被告人らに帰属するものであつて、右前田は、単に名義を貸したに止まるものであることを認定するに十分である。もつとも、右前田勝吉は、原審証人として国府温泉開発株式会社の株式取得のため、二回に計六〇万円を払込み、同会社の株式を取得した旨右認定に反し、所論にそう供述をしているけれども(原審第一九回公判調書中同証人の供述部分)、右供述は、前掲各証拠と対比して措信し得ないものであることが明らかであり、他に右認定を左右するに足りる証拠は存しない。従つて、これと同趣旨の原判決の認定は相当であつて、原判決には所論のごとき事実誤認の違法があるものとは認められない。論旨は理由がない。

五、 昭和三六、三七年分減価償却引当金勘定について。

所論は、本件勘定科目については、前記建物勘定の金額訂正に伴い、計算上当然に変更されねばならない、というのであるが、原判決の認定した建物勘定の金額に誤りがないことは、すでに説示したとおりであつて、建物勘定の金額にはなんらの変更もきたさないから、所論は前提を欠き採るを得ない。論旨は理由がない。

六、 昭和三七年分違約損失金勘定について。

所論は、要するに、原判決は、昭和三七年分違約損失金八〇〇万円を資産として計上し、これを事業上の損失金と認めなかつたのは事実誤認である。右金員は、被告人らの共同事業体が事業上支出し、損失を蒙つたものであるから、事業上の損失金とすべきものであつて、原判決認定のごときは、実体なき八〇〇万円を資産として計上し、過大な所得を認定したもので、被告人らに対し、二重の不利益を科するものである、というのである。

よつて按ずるに、戸田弘平作成の昭和三九年七月三一日付上申書、原審第二一回公判調書中証人戸田弘平の供述部分、同第一四回公判調書中証人石川新三郎の供述部分、被告人伊藤秋雄の検察官に対する昭和四〇年一月二〇日付第二回供述調書、被告人小野金夫の検察官に対する同年二月四日付供述調書及び被告人三名共同作成の昭和三九年七月一三日付上申書(前出)を総合考察すると、被告人らは、原判示罪となるべき事実の冒頭部分記載のとおり、共同して、志賀遊技場外四軒のパチンコ店及びパチンコ機械の製造、販売を目的とする京楽遊技製作所並びに喫茶店スワローを経営していたものであるが、昭和三六年一二月ごろ、パチンコ店の同業者で、かねて親密な間柄にあつた戸田弘平から、守山市(現在の名古屋市守山区)大字志段味字東谷山に、一年後には倍増保証付きのきわめて有望な土地があるから共同で購入しないかと誘われて、その気になり、被告人らとしては、さしあたり右土地を共同事業のために利用する具体的な計画は全くなかつたが、右土地が将来値上りすれば他に転売してもよく、場合によつてはこれを従業員宿舎の用地として利用してもよく、一応安い土地なら買つておけば得という気持から、同月二二日ごろ、被告人らの共同事業体に属するいわゆる裏金(売上脱漏による架空名義預金)の中から八〇〇万円を支出して、これを右戸田に交付し、右土地の共同購入方を同人に一任したこと(右金額は、原判決が昭和三六年分出資金勘定として計上した金額中に含まれている。)そこで、右戸田は、昭和三七年二月二六日ごろ、前記東谷山の土地の所有者と称するトーヨ商事株式会社富田誠こと西喜市との間に、右東谷山の土地(地目は山林)約五、〇〇〇坪を代金約一、八〇〇万円で買受ける契約をして、同年三月二〇日ごろまでの間に、被告人らからさきに交付を受けていた八〇〇万円を含めて、右代金全額を右西に支払つたこと、しかるに、その後間もなく、右東谷山の土地の真実の所有者は、西ではなく、結局西は、真実の所有者でないのに、所有者のように装つて右戸田を欺き、罰記金員を詐取したものであることが判明し、被告人らとしては裏金から出資した八〇〇万円につき、詐欺被害にかかつたものであることを認定することができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

そして、以上認定にかかる本件の事実関係に徹すると、被告人らの本件土地購入資金の支出は、主として売買差益による利得を目的としたものであつて、格別事業遂行のため必要な出資であつたとは認められず、その出損行為は、単なる剰余金(犯則所得金)の処分行為とみるのが相当であり、このような出損行為により、詐欺被害にかかつたとしても、税法上なんらの救済規定もないのであるから、所論のように右詐欺被害にかかつた金額を事業上の損失金として処理すべきものでないことは、多言を要しないところである。所論は、右金額は、所得税法上雑損控除の対象となる雑損失となるか、仮に然らずとしても、所得計算上必要経費となると主張するが、独自の見解というほかはなく、到底採用することができない。

所論は、また、原判決が実体なき八〇〇万円を資産として計上し、過大な所得を認定したと非難しているけれども、元来右金額が裏金すなわち売上脱漏による架空名義の預金から支出されたものであること及びこれが昭和三六年分において出資金勘定に計上処理されているものであることは、前記のとおりであるところ、昭和三七年度において、右金額につき、所得計算上、損金が発生したとすることのできないことも、すでに説示したとおりである。ところで、原判決は、昭和三七年分の所得の計算において、出資金勘定より右八〇〇万円を控除する反面、違約損失金勘定として同額を計上し、結局右八〇〇万円の犯則所得については、前年分に比較し、増減なしとして処理していることは、原判文並びに原判決挙示の関係各証拠により、明白であるから、原判決が虚無の資産を計上し、過大な所得を認定したとの所論は、採るを得ないものといわなければならない。論旨は理由がない。

控訴趣意第二点(量刑不当)について。

所論は、要するに、被告人らに対する原判決の量刑が重きに過ぎ不当である、というのである。

しかし、証拠にあらわれた本件犯行の動機、態様、ほ脱税額並びに被告人らの各性行、経歴、犯行後の状況等諸般の情状を総合考察すると、原判決の被告人らに対する量刑は、いずれも相当であつて、所論のごとく重きに失するものとは認められない。論旨は理由がない。

よつて、刑訴法三九六条に則り、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野村忠治 裁判官 村上悦雄 裁判官 小沢博)

控訴趣意書

所得税法違反 被告人 山口代造

同 伊藤秋雄

同 小野金夫

右被告事件について弁護人は左の通り控訴の理由を提出する。

昭和四六年二月二七日

右被告人三名弁護人

弁護士 石原金三

名古屋高等裁判所

刑事第二部 御中

第一点 事実誤認

原判決は弁護人、被告人主張の数額について

(一) 昭和三六年度売掛金勘定で大久保巌に対する九万円、山田政勝に対する八万円、岡本伍市に対する一五万円合計三三万円の存在

(二) 昭和三六年及び三七年両年度分の在庫品勘定で年末預り保有タバコ分として二〇〇万円及び一〇〇万円の存在

(三) 昭和三六年分出資金勘定で安藤秀一名義の一五〇万円は被告人らの所有でなかつたこと

をそれぞれ証拠により認定したが、右以外の関係主張数額を排斥した。しかしながら、右排斥の理由は分明でなく、関係証拠によつて十分認定できる左記各勘定科目については、事実を誤認したものというべく、それが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

以下、その理由を挙げる。

一、昭和三六年分売掛金勘定について

(1)松村四郎に対する金三七万二、〇〇〇円

国税局が書面照会した同人の回答書(記録証第三五九号)によると、昭和三五年六月二五日に、京楽遊機製作所からパチンコ機一三八台、金五五万二、〇〇〇円(単価四、〇〇〇円)、還元機及び取仕料一三八台分(単価一、六〇〇円)金二二万八、〇〇〇円合計金七七万二、八〇〇円を購入し、その代金は現金で全額支払済みとなつており、但し支払日は明らかでないところ、松村四郎を直接取調べた結果、同人は当時の取引帳簿を持参し、それに基づき右代金支払は

三五年七月一〇日 二〇万円

同年一一月一〇日 一〇万円

同年一二月一〇日 一〇万円

三六年一月一〇日 三七万二、八〇〇円(完済)

と記帖されていることを確定した。これは前記回答書と予盾しないのであつて、これによれば、昭和三五年末(昭和三六年度期首)において金三七万二、八〇〇円の売掛残の存することはきわめて明白であつて、これが否定される理由は全く存しない。

(2)柏原芳春に対する金一〇〇万円

同人については、松村四郎のように帖簿がないので断定的に主張することはできないが、被告人らの記憶を基礎に少くとも金一〇〇万円の売掛残が存在したものとの主張であるが、柏原の証言は、これを裏付けるに十分であると考える。すなわち、同人は昭和三五年六月、パチンコ機械の売買を開始すると同時から京楽遊機と取引があり、同三六年六月、京楽遊機の火災時まで継続したが、この間一ケ月二五〇台乃至三〇〇台(金額にして一二五万円乃至一五〇万円)の買付をしており、その代金支払方法は手付金を約三分の一支払つて機械を取付けて開店後残金を支払うことが多く、年末は台の入替時期で京楽遊機からも買つている筈である。

その結果、昭和三五年末に金一〇〇万円ぐらいの買掛金があつたと思う旨、明らかにしており、被告人らの主張がデタラメでなく十分根拠あるものと認められ、これを排斥する理由乃至資料は存しない。

(3)従つて、右二件は、これを認定すべきであるが、弁護人主張のその余の売掛金勘定の存在は立証資料に乏しいものと思料するので、原判決通りで異議はない。

二、昭和三六年度貯蔵品勘定について

この勘定の金八一万六、三九二円(資産)について、原判決がこれを認容することは全く事実関係を無視した不当のものとして異議がある。

すなわち、本件は昭和三六年一〇月に、それまで設置使用していた天吊型クーラー一四台が役にたたなくなつたので、これを新品に取替えるため除却し、工事施工をした伊藤冷機工業所に保管されていたものが、貯蔵品として資産に該当し、その価額は法定耐用年数により償却した残高であるとして、これにつき調査に当つた石川新三郎は「除却、すなわちスクラップとして売却したというような、あるいは事業用に完全にならなくて取除いたというわけでもない」と証言(昭和四三年七月一六日付)している。

しかし、右石川証言は、右除却の実体を全く無視して勝手なことを述べたもので、本件クーラーは役に立たないので除却したもので、被告人らはこの除却クーラーに価値を認めていなかつたし、事実このクーラーは、伊藤冷機がスクラップとして屑屋に対し金五、〇〇〇円で売却処分しているもので、石川証言は当らない。そして工事の際、被告人らが伊藤に対し「売れたら売つてくれ」といつて、除却品を引取らせたとしても、そのことはクーラーに価値を認めたものではなく、伊藤に処分を一任したもので、伊藤は、そのとき重量の目測で金七、〇〇〇円ぐらいに見積り、新品代金を相殺したものである。若し八〇万円余の価値があるものであれば、新品の下取品としてはつきり代金精算に加えたであろうし、売却代金の請求をするはずであるが、それらのことを全くしていない。(伊藤正直証言)要するに本件クーラーは実際上無価値に等しく、冷房機としての効用のないものであつたことは客観的に明らかであるから(不良品)これを形式的な償却をした残額につき、資産として課税することは不当である。石川証言の言葉の裏のように、事業用に全く役立たないので除却しており、除却損失とするのが相当であり、従つて除却損は金八一万六、三九二円から金七、〇〇〇円を控除した金額八〇万九、三九二円であり、仮に、除却損と認められないとすれば貯蔵品としての価額を金五、〇〇〇円若しくは七、〇〇〇円と認定すべきものである。

なお、昭和三七年政令第九四号所得税法施行規則第九条の一〇の第二項は本件に適用すべきものと思料する。

三、昭和三六年、三七年度建物勘定について

昭和二九年五月改築の第一京楽遊技場の建築工事代金の認定は金四〇万〇、九〇〇円とされているが、これは誤つている。

建築請負を中心でやつた古橋工務店古橋弘康の証言によると、この工事は、被告人伊藤の方が建坪一三坪五合の総二階で計二七坪、被告人山口の方が建坪二二坪の総二階で計四四坪、合せて一階がパチンコ店、二階が住居ということで改増築したものである。そして古橋工務店で大工工事(材木を含む)を請負い、屋板工事、電気工事、給排水工事、建具などは古橋以外の所でやつたということである。そうすると、古橋工務店の帖簿に記載されている金四〇万〇、九〇〇円は全く相当で、全工事費が四〇万〇、九〇〇円ということは絶対にありえない。

被告人らの金二〇〇万円の記憶は、決してウソを申立てているものでなく、古橋証言によつても本件工事が突貫工事にして工事費は割高であつたこと、及び大工工事費は全工事費の約三分の一であること、そしてネオン、その他特殊工事があり、全部で二〇〇万円ぐらいはかかつたと認められるといつており、これを信ずべきであるが仮に百歩を譲り大工工事費が総工費の三分の一との点に基づけば、逆算して少くとも金一二〇万二、七〇〇円は要したと認められる。古橋弘康が証言した内容と帖簿上の記載が予盾していないとすれば、国税局の調査が不徹底であつたという外なく、これに基く原判決の認定はまた誤りである。

四、昭和三七年度出資金勘定について

国府温泉開発株式会社に対する前田勝吉名義の出資金六〇万円が、いわゆる名義借りでなく前田が実際に出資したものであることの主張は、昭和三六年分の京楽産業株式会社に対する安藤秀一の出資と同様、本件査察調査当時は名義借りであるとしたことと矛盾し、被告人らにおいて前言を飜えすことになるわけであるが、多数人の名義借りの中であえてこの主張をなす所以は要するに、前田から出資を受けたことが事実だからに外ならない。

しかして、出資金関係は第三者との債権債務関係であるので、これは明確にすることが可能であり、明確にすべきである。前田勝吉の証言によれば、昭和三七年九月と同年一二月末に各三〇万円を被告人山口に渡し、出資したというものであり、前田はそして同年一一月から国府温泉旅館のマネージヤーとして約七年間勤務し、途中昭和三九年五月には取締役になつている。被告人らは、その支配する事業体の幹部には株式を持たせる方針にしており、前田は、被告人山口の親友の子息であつたので雇傭するに当り、将来幹部に昇進させる予定をもつてその出資を求めたものであり、前田がこれに応じ、本件出資をした事実は同人の証言によりこれを認むべきものである。

五、昭和三六年、同三七年度減価償却引当金勘定について

本件勘定科目については、前記建物勘定の訂正に伴い計算上当然に変更されねばならない。

六、昭和三七年度違約損失金勘定について

(イ) 昭和三七年度における損失金八〇〇万円については、記録上明白であり(戸田弘平証言)、弁護人の詳判主張したところについて、原判決は漫然これを排除し、その理由も明らかにしないが、この八〇〇万円は共同事業体の重大な損失として、課税の実質主義からみて到底無視し得ない点である。この損失について石川新三郎は、検察官の「簡単に言えば、仮に私土地に投資をしてもうけようというつもりで土地代金として人に金を渡したら、これが詐欺にかかつたといねた場合に私の所得税の計算上においては特別、損失金を認められるか、認められないかというときに、認められないんだということですか」との問に対し「例としては全くこれがいい例だと思います。たしかにそういうことが言えると思います。後略」(昭和四三年九月一三日証言)と述べているが、いわゆる給与所得者の例と同じだということは到底是認されないはずである。石川証人の同右証言中において、この八〇〇万円は、山口代造個人のものでなくて共同事業体から支出されたものであると判定した。(そして事業という概念はパチンコ事業以外の土地の売買あるいは有価証券の売買、貸金をやるということも共同体であるということでございます。としている。)しかし、右現金が裏金から出されたとし、被告人らの主張した事業目的(従業員宿舎建設)は疑わしい、転売利益を求めて詐欺にかかつたのだと種々勝手な臆測判断の上、結局、これを事実上損失と認められないと押しつけた。

(ロ) この国税局員の説明を是とし、これに則つた原判決は正しいものであろうか。断して否である。本件八〇〇万円の資金投入は被告ら、事業体の維持、経営のためにしたことは被告人らの主張するところであり、徴税に当る右石川証人が主観的にこれを否定するだけで、他に確たる資料をもつてこれを否定するものはない。

石川証人は資金投下を転売利益の目的であると認めるというが、左様な判定は実際に転売が行われた場合に飜えつて取得のときにおいて事業に供する目的であつたとしたような例に対してならばともかく、未だ転売をした事実もないのに、その目的であつたとし、一方的に納税者にとつて不利益な課税を強いる判断であつて、きはめて不当である。仮に転売利益を目的とした売買であるとしても、それが共同体の事業に属すべきことは石川証人も認める通りで、本件八〇〇万円の支出は事業上の支出であることは疑いないところである。

(ハ) そして、右八〇〇万円の支出が後に損金として計上さるべきことにつき左記の通り主張する。

(1) 三人の共同事業体は民法第六六七条に該当し、共同の事業を行うことを目的とする任意組合である。

(2) 三人の共同事業体の行う取引は、すべてその目的の範囲に属する取引であり、利益も損失も事業体の損益である。故に、本件八〇〇万円の支出は事業上の支出である。

(3) されば、本件八〇〇万円の損失が昭和三七年法第四四号所得税法第十一条の四の雑損失に該当しないとすれば、右損失は何であるか。換言すれば右損失は同所得税法第十条二項の総収入金額から控除すべき経費、すなわち「当該総収入金額を得るために必要なものとする」経費とするべきである。

(4) 「必要経費」については、同所得税法第十条に明示されているが、昭和二六年基本通達二一六〇「総収入金額を得るに必要なる経費のみに限る」とされ、同通達二一七において「税収入金額を得るに必要なもの」とは、原則として、総収入に対応する経費に限定されるものであるが、一つの企業から生ずる不動産所得、事業所得又は山林所得(法第九条第三号、第四号、第七号)については、経費が収支対応しているかどうかは、当該企業に属する総収入金額を総経費とを一体として、これを判定するものとすると規定している。

(5) 昭和三七年度法改正において、事業用の固定資産、その他これに準ずるものとして命令(施行規則第九条の一〇)で定める繰延資産、事業用の固定資産の取毀し除却、減滅その他の事由による損失の金額は、所得の計算上、これを必要経費に算入するとし、いわゆる資産損失を必要経費に含むものとされた。この改正の趣旨は「事業に投下された総資産の減少要因である以上、これを事業所得等の計算上必要経費に算入するのが妥当であるものと考えられる。」(税務講習所教材所得税法Ⅰ)である。

(6) また、必要経費とされる事業用固定資産の損失についての留意事項として、昭和三八年直審(所)一の四二通達では「譲渡所得の基因となる事由以外の一切の事由により当該固定資産について生じた損失であれば足り、当該損失の生じた事由となつた取毀し、除却、滅失等が災害、不法行為その他突発的な事故に因るものであるか、又は納税義務者の任意に因るものであるかを問わないのであるから留意すること、としている。

(7) 而して、反面「不法行為による所得」についてみると、昭和二六年基本通達一四八により、〈1〉窃盗強盗又は横領により取得した財物には所得税を課さない。〈2〉詐欺又は強迫により取得した財物は一応所有権が移転するものであるから当該財物から生ずる所得については、その内容に応じ、一時所得、事業所得として課税する。但し、後日裁判又は契約の解除により被害者に復帰した場合は更正をするものとする。と明記され、詐欺により所有権が移転し、加害者の課税対象となつた場合、被害者は所有権を喪失し、事業目的の取引によつて生じた損失として所得計算上必要経費となる。もし、所有権が裁判等により被害者に復帰する場合は、右必要経費を取り消し、課税所得を増加すること当然である。

以上の理由により、法および施行規則、通達を総合し、本件八〇〇万円が必要経費となること明らかである。

(ニ) そしてこの八〇〇万円を損失勘定とみても、被告人らにとつて少しも利益する結果になるものではない。原判決認定の如きは、実際の所得なきところに所得ありとするもので、実体なき八〇〇万円を資産として計上し(原判決昭和三七年度修正貸借対照表)過大な所得を認定したもので、被告人らに対し二重の不利益を科すものというべきである。

何故なら本件所得計算は資産増減法により、各年における資産の増減を計上して、その差額によつて所得を算出しており、各取引における損益は問題にしていないのであるから、虚無の資産を計上することは許されないものと考える。

以上の勘定科目について、原判決は事実の誤認があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免がれない。

第二点 量刑不当

原判決は、被告人らに対し、各懲役刑につき三年間の刑執行を猶予した上、多額の罰金刑を言渡した。

しかし、原判決には、第一点掲記の事実誤認があつて、さらに適正に御判決ある場合は、原判決の量刑重きに失し、不当であり、さらに本件事犯の動機、特に被告人らの年令、心情と犯罪後の納税および納税態度によれば改悛の情みるべきものがあつて、今日すでに本件行為後満八年を経過しており、この間何らの過誤なく処し得たことは、ひたすら自らを慎しみ、自ら制裁を加えて、因てもつて善良な社会の一員として復帰できるものであることを立証したものであるから、諸般の情状に鑑み、今後さらに三ケ年の刑執行猶予は長きに失するものというべく、これを短縮せられるのが相当であると思料し、温情溢る、御裁判を仰ぐ次第である。

以上

補充書

所得税法違反 被告人 山口代造 外二名

頭書被告事件について弁護人は左の通り答弁書に対し反論し、もつて控訴趣意を補充する。

昭和四六年五月六日

右弁護人 石原金三

名古屋高等裁判所

刑事第二部 御中

第一点 一の(1)について、

松村四郎から、名古屋国税局に提出した回答書によれば、なるほど代金金額が支払済みとなつているが、これは同書作成当時に、買掛残金が存しないことが判るだけで、検察官指摘のように「昭和三五年末に買掛残高が存しない」との事実は明記されていない。かえつて、代金支払日、およびその金額を明確にした松村四郎の証言は、取引元帳を、裁判官の面前で示しながら、これによつて、これを確認したものであつて、同証言を信用しない理由は全くあり得ない。

証人石川新三郎の第一二回公判証言の如きは、一般的な議論であるが、それでも右証言中「信用のおける長年その場所でやつて確固たる地位を築いているような先であれば、売掛金を相当残して継続していくということも考えられる云々」とあり、松村四郎は、まさに熊本市内に確固たる地位を築き、帳簿も全部整理保存している業者で、回答書のように、むしろ現金で一時払をしてしまつたとみられることの方が、不自然である。松村の証人尋問調書が採用せられぬことは採証法則上到底首肯できないところである。

同(2)について、

柏原芳春に対する一〇〇万円について、正確な金額を示す資料がないことは、すでに述べた通りで、被告人伊藤秋雄をこれを認めている。しかし、柏原を直接尋問した結果によれば、被告人らの主張してきた金一〇〇万円の数額が、ほとんど疑いなく裏付けられたといつてよく、これについて概括的な供述だから採用できぬとすることは相当でない。およそ、課税所得の把握にあたり、国税当局並に検察官は、果して自ら確定的な数額を立証したというのであるか。例えば本件の所得把握について、現金有高、在庫品、従業員預かり金等については、資料のない部分は全くの推計に算を加えて、計算上、でてきた数額を確定されたものとしていることは一件記録に照らし、明らかであり、被告人らもある程度のことはやむを得ないものとし容認するものであるが、逆に被告人らの主張する数額はハッキリした数額がしめされねばダメだということは、その論旨自体一貫性がなく、矛盾撞着を免がれない。柏原証人が宣誓の上、証言したことは、被告人らの主張に副うものであつて、この取引が事実であり、且つ代金支払方法も、十分首肯し得るものであるから、これを排除することは、相当でない。

第一点 二、について、

貯蔵品についても、右と同様のことがいえる。検察官は帳簿価格八一万円余のものが、わずか六、〇〇〇円か七、〇〇〇円でスクラップとして処理されたということは考えられないというが、現実にスクラップとして処理された事実を認めない趣旨であれば、右論旨は、証拠を無視した独断であつて、問題とすべきでない。所得税法は、かかる除却損を規定しているのであり、被告人らが検察官も認めているように「適当な処に売れたら売つてくれということ」で引取らせたことは、当然に商品価値がなく売れない場合も予想し、その処分を一任したと認めるのが相当で、その結果、商品として売れなかつたことが明らかである以上、これを除却損と見ることに何らの不都合はなく、むしろ、そのようにみなければ、法の精神に反するものであり、過酷不当な取扱いの非難を免がれないのである。

同三、建物勘定について、

検察官は、証人古橋弘康の証言内容と、同人の上申書による比較検討において、被告人ら主張の金額は高すぎるというにすぎず、古橋証言による四〇万〇、九〇〇円が大工々事のみであつたとする点を全く無視しており相当でない。本件工事がいわゆる突貫工事で、普通より多額の工事費を要したことは、首肯できるところであり、ひかえ目にみても、同証言により大工々事の三倍、一二〇万二、七〇〇円を要したことを否定する何等の資料もない。

同五、出資金勘定について

被告人らは、国税局に対する上申書の内容が事実と相違していたからこそ、公判において、安藤秀一の分とともに主張してきたのであつて、そして、証人前田勝吉をわざわざ申請取調を受けたのである。前田は石川新三郎の証言によつても最初から被告人山口に金を渡して出資していると述べているのであつて、被告人山口の一時立替がなされただけで、出資の事実には変りない。その他多数の名義借りについては、被告人らの認めている通りであつて、ただ前田勝吉の分は事実であるから、これを認定すべきであるということである。

同六、違約損失金について、

すでに、詳細に陳述主張した点について、慎重な御検討を賜わる外なく、ただ被告人らの出損が、値上り利益のみを考えてしたものとの検察官の主張は余りにも被告人らの主張を無視したものと指摘する。

これを要するに叙上の各論点を通じていえることは、課税所得の確定について、徴税する国の側からの主張は、推計計算によるものであつても又一徴税官の意見によつてもこれを認め、納税者側からの主張は、証人をもつてしても認容されないという結果になるのであつて、これでは疑わしきはすべて罰するという、きわめて、不合理且つ不相当な手続を是認することとなり、法の所期する納税義務の適正な履行を求めることは到底できないところである。

第二点について、

本件事犯の 脱額が多額で、手段が悪質であるとの主張については、その当を得ないものと思料する。

被告人らの所為は、この種ほ脱事犯として多くみられる計画的に二重帳簿を作成する等のこともなく、また帳簿知識もなく、ただただ働くだけの人間であつたために、(伊藤秋雄の公判廷における供述)自分の所得計算もしないで、馬車馬的に仕事を伸張してきた結果が、本件事態であつて、決して悪質といわれる事案ではない。また、金額的にみても、特に多額ということもあり得ず、(最近では億以上のものも多い。)本件事犯後の、真面目な営業並に納税態度こそ、被告人等の利益な情状として、比重が大きいものと考えられる。 〔以上〕

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